野外の光環境下において生じる光阻害と
光合成の調節メカニズムの解明


 光は植物の光合成に必須で、植物は光合成の機能を守るためにさまざまな環境応答メカニズムを備えています。
 直射日光のような強すぎる光は光合成機能にダメージを与え、光合成速度を低下させます。また、曇天や薄暮などの弱光下でも光合成速度が低下します。
 これまでの光合成研究は、安定した環境での光合成応答を解析していました。しかし野外の光強度は一日を通して常に変動しており、必ずしも一定ではありません。こうした「変動する光環境ストレス」に対する植物の環境応答メカニズムはほとんど明らかにされていません。



 植物は太陽エネルギーを吸収して、電子伝達経路において還元力や化学エネルギー(NADPHやATP)に変換する(電子伝達)。そして、それらの化学エネルギーを利用して、外気からCO2を取り込み(気孔開口)、葉緑体でCO2を固定します(炭酸固定)。


 これまでの私たちの研究成果によって、光合成の電子伝達に関わる2つのサイクリック経路が、変動する光環境での光合成応答に重要な役割を果たすことを明らかにしました。
 今後、変動する光環境に対する光合成応答の全貌解明を進め、光合成効率の改善のみならずバイオマス生産量の確保の技術開発に貢献することで、地球レベルの大気中CO濃度の低減や食料増産が期待されます。


*上記論文を論文をScientific Reports誌に発表
  (Yamori et al. 2016)
*JSTからプレスリリースを発表



 光エネルギーの利用とCO2の取り込み、さらには、それを繋ぐ電子伝達は密接に関連していて、これらの調和が取れて初めて光合成反応が進みます。
 現在、変動光環境に対して、電子伝達や気孔開口、そして、炭酸固定のそれぞれの反応がどのように応答するかを統合的に解析しています。これらの研究成果は光合成の環境応答の統合的理解につながり、光合成効率向上のための技術基盤つくりにも貢献すると考えられます。



<その他>
*変動する光環境におけるRubisco activaseの役割については、以下の論文を参照
 (Yamori et al. 2012, The Plant Journal
*野外の光環境において生じる光阻害については、以下の論文を参照
 (Takahashi et al. 2010, Plant Physiology )
*総説については、以下の論文を参照
 (Yamori & Shikanai 2016, Annual Review of Plant Biology )
 (Yamori 2016, Journal of Plant Research ).
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